システム開発の基礎:ウォーターフォールモデルとは

システム開発の基礎:ウォーターフォールモデルとは

ICTを知りたい

先生、『ウォーターフォール』って、システム開発のやり方の一つだって聞いたんですけど、どういうものなんですか?

ICT研究家

いい質問ですね! 『ウォーターフォール』は、水が上から下に流れ落ちるように、開発工程を順番に進めていく方法のことです。たとえば、家を建てる場合で考えてみましょう。まず、どんな家に住みたいか設計図を書くよね。それが『要件定義』や『設計』の段階です。次に、基礎工事をして、柱を立てて、屋根をつけて…と順番に進めていく。ウォーターフォールは、このように各工程を順番に進めていくので、全体像を把握しやすいのが特徴です。

ICTを知りたい

なるほど!じゃあ、家を建てている途中で、やっぱり間取りを変えたい!ってなったらどうするんですか?

ICT研究家

それは大変ですね! ウォーターフォールの場合、一度工事が進んだ工程を戻すのは、簡単ではありません。 例えば、基礎工事の後で間取りを変えると、基礎から作り直す必要があるかもしれません。だから、ウォーターフォールで開発する場合は、最初にしっかりと計画を立てて、途中で変更がないように進めることが重要です。

ウォーターフォールとは。

情報通信技術でよく使われる言葉に「ウォーターフォール」があります。これは、水が上から下に流れ落ちる様子になぞらえた、システム開発の手法の一つです。「ウォーターフォールモデル」と呼ばれることもあります。

ウォーターフォールでは、システム開発を「どんなシステムを作るかを決める」「システムの外観を設計する」「システムの中身を設計する」「設計図をもとにプログラムを作る」「作ったプログラムが設計通りに動くか確認する」といった段階に分けて進めます。それぞれの段階が終わってから次の段階へ進むのが特徴で、基本的には前の段階に戻ることはありません。

しかし、開発の途中で「やっぱりシステムの内容を変更したい」というようなことが起きた場合は、最初の段階からやり直しになってしまうことがあります。

ウォーターフォールとは反対に、開発の段階をもっと細かく分けて、短い期間でプログラムを作っては確認することを繰り返す開発手法は「アジャイル開発」と呼ばれています。

ウォーターフォールモデルの概要

ウォーターフォールモデルの概要

– ウォーターフォールモデルの概要ウォーターフォールモデルとは、システム開発を進めるための一つの手法です。まるで滝の水が上から下へと流れ落ちるように、開発工程を順番に進めていくことから、この名前が付けられました。システム開発は、一般的に、顧客の要望を明確にする「要件定義」、システムの設計図を作る「設計」、実際にシステムを作る「開発」、システムが正しく動くかを確認する「テスト」、そして完成したシステムを実際に使い始める「運用」といった工程に分けられます。ウォーターフォールモデルでは、これらの工程を順番に進めていきます。前の工程が完了してからでないと、次の工程に進むことはできません。例えば、「設計」の段階で「要件定義」の内容に誤りが見つかったとしても、「要件定義」の工程まで戻って修正する必要があります。このように、ウォーターフォールモデルは、工程ごとに明確な区切りがあり、進捗状況を把握しやすいという特徴があります。また、各工程の成果物が明確なので、後から開発に参加するメンバーにも理解しやすく、大人数での開発にも適しています。しかし、開発の後半になって要件の変更や問題点が見つかった場合、大幅な手戻りが発生する可能性もあるため、注意が必要です。

ウォーターフォールモデルの概要

ウォーターフォールモデルの利点

ウォーターフォールモデルの利点

ウォーターフォールモデルは、その名の通り、水が上から下に流れ落ちる滝のように、システム開発を上流工程から下流工程へと順番に進めていく開発手法です。このモデルは、各工程が明確に分かれており、工程ごとの役割分担もはっきりとしているため、プロジェクトの進捗状況を把握しやすいという利点があります。これは、大人数の開発チームを編成する場合や、システム開発の経験が浅いメンバーが多い場合でも、プロジェクト全体を円滑に進める上で大いに役立ちます。

また、ウォーターフォールモデルでは、各工程の終わりに成果物を明確に定義します。このため、開発の途中で新しいメンバーが参加した場合でも、それまでの流れや要件を理解しやすくなります。さらに、成果物に基づいて品質の確認を行うため、システム全体の品質を一定に保ちやすいというメリットもあります。このように、ウォーターフォールモデルは、分かりやすさと進捗管理のしやすさを大きな特徴としており、特に大規模プロジェクトや開発経験の浅いチームにとって有効な開発手法と言えるでしょう。

項目 内容
特徴 工程が明確に分かれており、役割分担もはっきりしている
メリット
  • プロジェクトの進捗状況を把握しやすい
  • 大人数の開発チームや、経験が浅いメンバーが多い場合でも円滑に進めやすい
  • 各工程の終わりに成果物を明確に定義するため、新しいメンバーが参加しても理解しやすい
  • 成果物に基づいて品質確認を行うため、システム全体の品質を一定に保ちやすい
まとめ 分かりやすさと進捗管理のしやすさが特徴で、大規模プロジェクトや開発経験の浅いチームに有効

ウォーターフォールモデルの課題

ウォーターフォールモデルの課題

– ウォーターフォールモデルの課題

ウォーターフォールモデルは、システム開発などのプロジェクトを進める際によく用いられる手法の一つです。その名の通り、水が上から下へと流れ落ちる滝のように、工程を順番に完了させていくことが特徴です。しかし、このウォーターフォールモデルは、現代の複雑化する開発現場では、いくつかの課題を抱えていることも事実です。

ウォーターフォールモデルでは、プロジェクト開始時に顧客の要求を完全に把握し、全ての機能を定義する必要があります。しかし、現実的には開発中に顧客のニーズが変化したり、技術的な問題が明らかになることは少なくありません。そのため、開発の後半になって要件の変更や追加が発生した場合、多大な手戻りが発生し、スケジュールやコストに大きな影響を与えてしまう可能性があります。

例えば、開発が進んでから顧客が新たな機能を求めたとします。ウォーターフォールモデルでは、既に完了した設計や開発をやり直す必要が生じ、大きなロスが発生してしまう可能性があります。また、開発の初期段階で顧客と開発側の認識に齟齬があった場合、開発後期になってからその齟齬が判明し、当初の計画から大きく逸脱してしまう可能性も孕んでいます。

このようなウォーターフォールモデルの柔軟性の低さは、変化の激しい現代のビジネス環境においては、大きなリスクと言えるでしょう。

ウォーターフォールモデルの課題 詳細
顧客の要求の変更への対応が難しい 開発開始時に全ての機能を定義するため、開発中に顧客のニーズが変化したり、技術的な問題が明らかになった場合、手戻りが発生しやすく、スケジュールやコストに大きな影響が出る。 開発途中で顧客が新しい機能を求めた場合、既に完了した設計や開発をやり直す必要が生じる。
顧客と開発側の認識の齟齬 開発の初期段階で認識の齟齬があった場合、開発後期になってから判明し、当初の計画から大きく逸脱してしまう可能性がある。
柔軟性の低さ 変化の激しい現代のビジネス環境において、ウォーターフォールモデルの柔軟性の低さは大きなリスクとなる。

アジャイル開発との比較

アジャイル開発との比較

– アジャイル開発との比較

近年、従来の開発手法であるウォーターフォールモデルとは対照的に、アジャイル開発という手法が注目を集めています。ウォーターフォールモデルは、滝の水が上から下に流れ落ちるように、企画・設計・開発・テスト・運用という工程を順番に進めていく開発手法です。一方、アジャイル開発は、短い期間で開発とテストを繰り返しながら、ソフトウェアを完成に近づけていく手法です。

ウォーターフォールモデルでは、開発の初期段階ですべての要件を確定させる必要があります。そのため、開発途中で顧客の要望が変更になった場合や、市場のニーズの変化に迅速に対応することが難しいという側面がありました。一方、アジャイル開発では、開発を進めながら顧客と密にコミュニケーションを取り、柔軟に要件の変更に対応していくことが可能です。この柔軟性の高さにより、変化の激しい現代のビジネス環境において、アジャイル開発は非常に有効な開発手法として認識されています。

しかし、アジャイル開発は、綿密な計画を必要としないわけではありません。短い期間で開発を繰り返すサイクルを円滑に進めるためには、開発チーム内での密な連携や、顧客との良好なコミュニケーションが不可欠となります。

項目 ウォーターフォールモデル アジャイル開発
開発の流れ 企画→設計→開発→テスト→運用を順番に進める 短い期間で開発とテストを繰り返し、ソフトウェアを完成に近づける
要件定義 初期段階ですべての要件を確定 開発を進めながら、顧客と密にコミュニケーションを取り、柔軟に変更に対応
顧客とのコミュニケーション 開発中に変更が生じると対応が難しい 密なコミュニケーションが可能
柔軟性 低い 高い
計画性 綿密な計画が必要 短いサイクルを円滑に進めるための計画とコミュニケーションが重要

ウォーターフォールモデルの活用事例

ウォーターフォールモデルの活用事例

– ウォーターフォールモデルの活用事例

ウォーターフォールモデルは、その名の通り、水が上から下へと流れ落ちる滝のように、工程が順番に進んでいく開発手法です。このモデルは、大規模なシステム開発や、顧客の要求が明確で変更が少ないプロジェクトに適しています。

例えば、金融機関の基幹システム開発などは、ウォーターフォールモデルが有効な事例として挙げられます。銀行の預金システムや証券会社の取引システムなどは、一度稼働すると長期にわたって安定稼働することが求められます。このような重要なシステムにおいて、開発中に頻繁な仕様変更が発生すると、予期せぬ不具合や納期の遅延に繋がってしまう可能性があります。そこで、ウォーターフォールモデルを採用することで、開発の初期段階で顧客としっかりと要件定義を行い、綿密な計画に基づいて開発を進めることが可能になります。

また、ウォーターフォールモデルは、各工程の成果物が明確であるため、進捗管理が容易であるというメリットもあります。金融機関の基幹システム開発のような大規模プロジェクトでは、多数の開発者が関わるため、進捗状況を把握し、適切に管理することが重要になります。ウォーターフォールモデルでは、各工程の終了時に成果物に対するレビューと承認を行うため、プロジェクト全体の進捗を可視化し、問題発生時には早期に対応することができます。

このように、ウォーターフォールモデルは、要件が明確で変更が少ない大規模プロジェクトにおいて、特にその真価を発揮する開発手法と言えるでしょう。

項目 内容
モデル名 ウォーターフォールモデル
特徴 工程が順番に進んでいく
水が滝のように上から下へ流れるイメージ
メリット – 大規模開発や顧客の要求が明確で変更が少ないプロジェクトに最適
– 各工程の成果物が明確で進捗管理が容易
活用事例 金融機関の基幹システム開発など
– 銀行の預金システム
– 証券会社の取引システム
事例における利点 – 長期にわたる安定稼働を実現
– 開発中の頻繁な仕様変更による不具合や納期の遅延を防ぐ
– 多数の開発者間での進捗状況の把握、管理を容易にする

まとめ

まとめ

この記事では、システム開発における代表的な手法の一つであるウォーターフォールモデルについてまとめます。

ウォーターフォールモデルは、その名の通り水が滝のように上から下へ流れ落ちるように、システム開発を企画から運用・保守までの各工程を順番に進めていく手法です。各工程は明確に分かれており、前の工程が完了してから次の工程に進むという流れであるため、進捗状況を把握しやすいという特徴があります。また、各工程で成果物とレビューを設けることで品質を統一しやすくなるという利点もあります。

しかし、ウォーターフォールモデルは変化への対応力が低いという側面も持ち合わせています。システム開発は予測不可能な事態が発生することも多く、一度後の工程に進んでしまうと、前の工程に戻るのが困難な場合も少なくありません。そのため、開発中に顧客の要求仕様に変更が生じた場合や、技術的な問題が発生した場合などは、対応に時間を要したり、追加費用が発生したりする可能性もあります。

近年では、アジャイル開発などの柔軟性の高い開発手法も普及してきていますが、ウォーターフォールモデルは長年の歴史の中で培われたノウハウや、進捗管理のしやすさといった点で、依然として有効な開発手法です。プロジェクトの特性や規模、開発期間などを考慮し、ウォーターフォールモデルのメリット・デメリットを理解した上で、最適な開発手法を選択することが重要です。

項目 内容
概要 システム開発を企画から運用・保守まで順番に進める手法
メリット
  • 進捗状況を把握しやすい
  • 品質を統一しやすい
デメリット 変化への対応力が低い
その他 近年はアジャイル開発など、柔軟性の高い開発手法も普及
プロジェクトの特性や規模、開発期間などを考慮し、最適な開発手法を選択することが重要