企業活動の心臓部、SAP R/3とは?

企業活動の心臓部、SAP R/3とは?

ICTを知りたい

先生、『R/3』って昔のコンピューターのことですか?

ICT研究家

う~ん、そうとも言えるけど、ちょっと違うかな。『R/3』はコンピューターそのものではなく、会社全体で使う事務の仕組みをコンピューターで動かすためのソフトウェアのことだよ。会社のあらゆる活動を記録して、必要な情報をすぐに取り出せるようにしてくれるんだ。

ICTを知りたい

事務の仕組みを動かすソフトウェア?なんだか難しそうですね…。

ICT研究家

そうだね。簡単に言うと、会社の仕事を効率的に進めるための道具の一つと考えればいいよ。『R/3』は世界中で広く使われていたけれど、今はもっと新しいソフトウェアが出てきているんだ。

R/3とは。

「ICT関連用語の中に『R/3』というものがあります。これは、SAP社が1992年から2014年まで販売していた、企業の経営活動を支援するソフトウェアの製品名です。世界中で広く使われていた有名な製品の一つです。

このソフトウェアは、お金の流れを管理する機能、販売管理、従業員管理、仕入れや在庫管理、生産管理など、様々な機能を持っていました。

2004年に新しい製品シリーズが発表されたことをきっかけに、『R/3』という名前は使われなくなりました。そして、2015年には『R/3』の進化版となる新しい製品が登場し、『R/3』シリーズは完全にその役割を終えました。

R/3:かつて企業システムの代名詞だった

R/3:かつて企業システムの代名詞だった

1992年から2014年にかけて、ドイツのSAP社が販売していたERPパッケージ製品「R/3」は、かつて企業システムの代名詞とも言える存在でした。世界中の企業に導入され、特に大企業向けのERPパッケージ製品としては圧倒的なシェアを誇りました。日本でも、多くの企業がR/3を導入し、その名を轟かせました。

R/3の最大の強みは、顧客管理、会計、人事、在庫管理など、企業のあらゆる活動を包括的に管理できる点にあります。 それぞれの業務システムが密接に連携し、情報を一元的に管理することで、業務の効率化、コスト削減、迅速な意思決定などを実現できる点が、多くの企業から支持を集めました。

例えば、ある製品の受注情報を入力すると、自動的に在庫が確認され、不足している場合は発注処理が行われます。同時に、顧客情報や販売履歴に基づいて最適な配送ルートが選択され、出荷指示が出されます。このように、R/3は、企業内の様々な業務プロセスを自動化し、効率的に業務を遂行することを可能にしました。

しかし、近年では、クラウドコンピューティングの普及や、より柔軟性や拡張性に優れたERPパッケージ製品の登場により、R/3はかつてほどの勢いはありません。

それでも、R/3は、企業システムの歴史に名を刻む、革新的な製品であったことは間違いありません。そして、R/3で培われた技術やノウハウは、SAP社のその後の製品開発にも活かされています。

項目 内容
製品名 R/3
提供会社 ドイツ SAP社
提供期間 1992年~2014年
特徴 企業のあらゆる活動を包括的に管理できるERPパッケージ製品
メリット – 業務システムが密接に連携
– 情報の一元管理による効率化、コスト削減、迅速な意思決定
受注情報入力→在庫確認→不足時発注処理→最適配送ルート選択→出荷指示
現状 クラウドERP等の登場により、勢いは衰えている
影響 企業システムの歴史に名を刻む革新的な製品であり、その後のSAP製品開発にも影響

豊富な機能群

豊富な機能群

– 豊富な機能群

R/3最大の特徴は、多岐にわたる業務に対応できる豊富な機能群です。企業活動の基幹となる財務会計(FI)はもちろん、販売管理(SD)人事管理(HR)購買・在庫(MM)生産管理(PP)など、ありとあらゆる業務を網羅しています。

各機能はそれぞれ独立しているのではなく、互いに密接に連携することで、企業全体を一つのシステムで管理することを可能にしています。例えば、販売管理システムで受注が発生すると、製造に必要な資材が自動的に購買管理システムに連携され、在庫状況に応じて発注が行われます。

さらに、R/3は特定の業界に特化した機能をまとめた業種別ソリューション(IS Industry Solutions)も提供しています。これは、各業界特有の商習慣や業務プロセスに最適化された機能群であり、より効率的かつ効果的な業務遂行を支援します。

このように、R/3は包括的な機能群によって、企業の業務効率化、データの一元管理、そして戦略的な意思決定を力強く後押しします。

技術革新の波

技術革新の波

2004年、エンタープライズリソースプランニング(ERP)ソフトウェアの大手であるSAP社は、新たな製品シリーズ「mySAP」を発表しました。このシリーズでは、従来の主力製品であった「R/3」に相当する製品が「SAP ERP Central Component(ECC)」へと名称変更されました。この変化は、従来のR/3システムを進化させ、より柔軟性や拡張性を高めることを目的としていました。
そして2015年、R/3の進化系として「SAP Business Suite 4 HANA」(SAPS/4HANA)が登場します。この最新鋭のERPシステムは、従来のデータベース技術とは一線を画すインメモリーデータベース「SAP HANA」を採用し、処理速度の大幅な向上やリアルタイム分析の実現といった革新的な進化を遂げました。このSAPS/4HANAの登場により、長年にわたり企業システムの中核を担ってきたR/3シリーズは、その歴史に幕を閉じることとなりました。
しかし、R/3は単にその役目を終えたわけではありません。R/3で培われた技術やノウハウは、その後のSAP製品の礎となり、企業システム全体の進化に大きく貢献してきました。今日においても、R/3は多くの企業にとって貴重な財産として、その歴史と功績が語り継がれています。

製品名 リリース年 特徴 目的/効果
R/3
mySAP ERP Central Component(ECC) 2004年 従来のR/3システムを進化 柔軟性や拡張性を高める
SAP Business Suite 4 HANA(SAPS/4HANA) 2015年 インメモリーデータベース「SAP HANA」を採用 処理速度の大幅な向上やリアルタイム分析の実現

R/3の功績と、その後の進化

R/3の功績と、その後の進化

1990年代初めに登場したR/3は、それまでの企業システムに革命をもたらしました。企業の基幹業務である、販売管理、在庫管理、会計処理などを一つのシステムに統合し、業務の標準化と効率化を実現したのです。

R/3は、部門ごとにばらばらだった情報を一元管理することで、企業全体の情報共有を促進しました。これにより、迅速な意思決定や業務の連携が可能になり、企業の競争力強化に大きく貢献しました。

しかし、技術の進歩やビジネス環境の変化に伴い、R/3はシステムの複雑化や柔軟性の面で課題を抱えるようになりました。そこで登場したのが、SAPS/4HANAです。

SAPS/4HANAは、インメモリーデータベース「SAP HANA」を基盤とし、従来のR/3の課題を克服した次世代のERPシステムです。大量のデータを高速で処理できるため、リアルタイム分析が可能になり、経営判断の迅速化を実現しました。また、操作画面も現代的なデザインに刷新され、より直感的に操作できるようになりました。

R/3で培われたノウハウは、SAPS/4HANAにもしっかりと受け継がれています。SAPS/4HANAは、企業のデジタル変革を支援し、さらなる成長を後押しするシステムとして、今後も進化を続けていきます。

R/3 SAPS/4HANA
概要 1990年代初頭に 登場した
企業の基幹業務を統合し、業務の標準化と効率化を実現
R/3の課題を克服した次世代ERPシステム
SAP HANAを基盤とし、大量のデータを高速処理
メリット – 業務の標準化と効率化
– 企業全体の情報共有
– 迅速な意思決定
– 業務の連携
– リアルタイム分析による経営判断の迅速化
– 操作性の向上(現代的なデザイン)
– 企業のデジタル変革の支援
課題 – システムの複雑化
– 柔軟性の欠如

企業システムの未来へ

企業システムの未来へ

1990年代初頭に誕生した、企業資源計画システム「R/3」は、多くの企業で広く活用され、四半世紀にわたりビジネスの成長を支えてきました。しかし、この間、インターネットの普及や、あらゆるものがインターネットに接続されるIoT、人工知能(AI)、クラウドといった革新的な技術が登場したことで、企業を取り巻く環境は大きく変化しました。

この変化の波は、企業システムにも大きな影響を与えています。従来のシステムでは、膨大なデータの分析や処理、リアルタイムな情報共有、変化への柔軟な対応が難しく、企業は競争力を維持するために、システムの刷新を迫られています。

こうしたニーズに応えるため、SAP社は「SAPS/4HANA」を中核とした、企業のあらゆる活動をデジタル技術で結びつけ、全体最適化を図る「インテリジェントエンタープライズ戦略」を推進しています。この戦略は、企業がAIやクラウドなどの最新技術を活用し、業務の効率化、新たな価値創造、競争力強化を実現することを目指しています。

SAP社のERPシステムは、今後も進化を続けながら、企業の成長を支える重要な役割を担っていくでしょう。

時代 技術革新 企業システムへの影響 SAP社の対応
1990年代~ – 企業資源計画システム「R/3」誕生 – 多くの企業で「R/3」が活用され、ビジネスの成長を支える
現在 – インターネットの普及
– IoT
– AI
– クラウド
– 膨大なデータの分析や処理、リアルタイムな情報共有、変化への柔軟な対応が求められる
– システム刷新の必要性
– 「SAPS/4HANA」を中核としたインテリジェントエンタープライズ戦略
– AIやクラウドなどの最新技術を活用し、業務効率化、新たな価値創造、競争力強化